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概要

海外探検隊_6

研究室研修:シンガポール国立大学(NUS)Tropical Marine Science Institute(TMSI)私達はシンガポール国立大学の熱帯海洋科学研究所(以下TMSI)で一週間研究を行いました。こちらの研究所では現在サンゴを用いた海洋環境の改善に取り組んでおり、私達はその一部の研究をお手伝いしました。私達は一週間のプロジェクトの中で、2つの実験を行いました。まず一つ目は、サンゴの食害を防ぐ研究です。シンガポール近辺の海域にはサンゴを食べる巻貝が生息しているのですが、その巻貝を食べるカニをサンゴに住まわせることで、サンゴの食害をどれほど防ぐことができるのか、条件を揃え実験し、パソコンのソフトでデータを整理してグラフィック化しました。この実験を行うにあたり、実際に船でシンガポールの海に出てサンゴのサンプリングに同行し、スノーケリングも行いました。二つ目は、サンゴが海の生物多様性にどのような影響を及ぼしているのかを調べる研究です。具体的に言うと、海中にカメラを設置し、サンゴがある場所とサンゴがない場所を観察して、どのような種類の魚がどのくらい集まるのかを調査し、データを取って両者を比較する作業を行いました。私達は研修当時は学部の1,2年生で、大学の研究室がどのようなところなのか、まだ良く掴めていなかったので、この研修はとても新鮮な体験となりました。上記の通り私達は二つの実験に関するデータのサンプリングが主なアクティビティであったのですが、これらは地道で根気が必要な作業でした。たとえば、海中カメラを見て魚の種類と数を計測する作業では、ある海中カメラの設置ポイント一つにつき、計15分のビデオを見るのですが、シンガポール周辺の海域は透明度があまり高いとは言えず、カメラの画質が落ちると魚種の判別が困難になり、さらには魚がいるのかどうか判断するのですら難しい状況もありました。そのため、ビデオを隅から隅まで集中を切らさず規定時間一杯まで注意深く観察する集中力が求められます。研究という言葉を聞くと自分は華やかなイメージを持っていましたが、実際はこうした地道な実験を根気よく続ける継続力を持った研究者こそが、メディアで取りあげられるような大きな成功を収めることが出来るのだと改めて実感しました。また、今回私達が訪問したTMSIの設備の良さには驚かされました。今回私達がサンゴのサンプリングをしに向かった島には、海洋大でいう館山ステーション(坂田)のような実習施設があり、そこでは沢山の水産生物が飼育されていました。また、TMSIはビルのある一室にあるのではなく、大学側から1つの建物をまるまる与えられています。広々とした環境でひたすら研究に没頭できる空間がそこにはありました。このプロジェクトを通じて、海外で研究活動をすることへの興味が湧きました。しかし、一方で難しいと感じたこともあります。それは、外国語で異国の研究者とコミュニケーションを取り、自分の研究を論理立てて説明できるようにしなければならないということです。日常的なコミュニケーション程度であるならば、ある程度の曖昧さは許容されます。しかし、研究活動においてはそうはいきません。アカデミックに物事を説明するには、論理の整合性と明瞭さが求められ、できる限り曖昧さを回避しなくてはなりません。そのためには高い語学力が求められます。自分がもし海外で研究活動をしたいとなったとき、きっとその点が課題になるのではないかと思います。低年次の段階でこのことに気づきを得たのはとても意義深いことだと思います。自分の将来の選択肢を広げるために今何をすべきなのか。そのヒントをこのプロジェクトで得ることができました。(大嶋 航平)23