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概要

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Victoria University of Wellington最初の2日間はNIWA(the National Institute of Water and Atmospheric Research)にお世話になりました。国立の研究所での研修はとても貴重な経験でした。カイアシ類の同定・測定や、南極からの冷凍保存された海綿類とアルコールを瓶に詰めてラベリングする作業をしました。とても単純な作業ですが、これも研究者の仕事で大きな発見にはこのような過程も必須なのだということは、これまで考えたことがありませんでした。一方で、冷凍海綿は一年前に採取してきたものだということで、研究者の方々は、データの解析など応用的な研究作業も多く、間に合っていないことが多いのだということも分かりました。ネイティブの話す英語はもちろん速く、そこに専門用語が加わると、聞き返して解説をしてもらわなければ、何を言っているのか全くと言っていいほど理解できませんでした。その物事の知識をもっていたら、説明を聞くときも推測ができたと思います。4週間のうちの残りの日程は大学の研究所VUCEL(Victoria University Coastal Ecology Lab)でredsnapper, kahawai, whitebaitの3種類の魚の研究に関わらせてもらいました。魚から耳石を取り除いたり、内臓の重さを計ったり、魚の測定をしました。漁獲場所とこれらのデータを比較することで、産卵場所が分ったり、耳石から年齢を導き出しその種についてどれだけ漁獲されているかを推測したりして、漁獲管理に役立てられるそうです。大学の研究もacademicというよりはeconomicな研究を行っていると先生がおっしゃっていて、とても誇らし気で、楽しそうだったので、私も漁獲管理に興味をもつことができました。ただ、このプログラムに参加時は海洋大で研究を始める前だったので、日本の研究と産業や経済のかかわり方の知識がなかったため、ニュージーランドと日本とを比べることはできませんでした。魚の測定は実験で経験したことがあったのですが、何のために測定を行うのか全く理解していなかったのであまり興味を持てていませんでした。VUCELで学んだことで、魚の測定がどのような意味をもつか、ということが理解でき、それが役に立つということも分かったので、興味深く実験を進めることができました。また、魚の特性を解析するためには、何百、何千とデータを取らなければならないということで、これも多大な時間を要する地道な作業だということが分かりました。大学で習った基礎的なことは、決して無駄ではなくむしろそのまま役立てられることだったということを知り、それを理解していたら、興味の方向も変わっていたかもしれないと思いました。当初の予定では、私はVUCELで一ヶ月を過ごす予定でしたが、普通の大学生のキャンパスライフも体験してみたいと要望したところ、受け入れてもらい、いくつか学部の生物系講義も受けさせてもらえました。日本の授業は一方的で外国では意見が飛び交ったり質問が飛び交ったりするといったイメージをもっていました。中にはそういった授業もありましたが、日本とほとんど変わらない授業もありました。学部の授業になると日本で学んだ内容と似ているものもあり、知らない単語も知識と推測で理解することができました。一ヶ月過ごしてみて、英語は今までの海外経験のときよりもずっと出来ていない実感をもちました。専門知識のなさももちろんですが、ネイティブの使うニュアンスの使い分けやボキャブラリーの量に苦しめられました。しかし、大学院生の大多数はニュージーランド人ではなく、彼らは恥じることもなく堂々と当たり前に英語を話していました。そういったことを知ることで、英語はもちろん、学問についても知識を増やしていこうと思える1ヶ月でした。(下浦 奈央)44