ワンジーイーン シンガポール国立大学(NUS)の熱帯海洋科学研究所(TMSI)は海洋科学に関わる幅広い研究を行っており、海洋の生物多様性をはじめ、気候変動等も取り扱っている研究拠点です。 発表を終えて NUS の先生と記念撮影 的や保全方針によって見方が変わるということを理解しました。保護の線引きが恣意的でありながら、同時に柔軟な思考が必要であることを感じました。また、NUS の研究者や学生が潜水調査に取り組み、自らの研究の意義をはっきりと伝える姿からは、目的意識とコミュニケーション力が研究を前進させる大きな原動力になることを学びました。 今回の研修は一週間という短い期間ではありましたが、知識の習得だけでなく、研究現場の姿勢や価値観に直に触れる貴重な機会となりました。分類や調査、保全の多様なアプローチを体験したことは、自分の研究分野を考える上で大きな刺激となり、将来の進路を考える際の確かな指針にもなったと思います。この研修で得た学びを活かして、これからは自分も海洋環境の保全に少しでも貢献できるよう努力したいと思いました。 22 第 25 期シンガポール隊は、シンガポール国立大学(NUS)の熱帯海洋科学研究所で、サンゴを中心とした生態系に関する一週間の研修に参加しました。講義やフィールドワーク、研究所の見学を通して、サンゴ研究と保全の現場を多角的に学ぶことができました。中でも特に印象に残ったのはサンゴ識別に関する講義で、コラライトの形やリッジの並び方、プルコイド型やセリオイド型といった構造の違いによって分類される方法を初めて具体的に知ることができました。この講義で得た知識を基礎として、次にマリーナ・ケッペルベイ(MKB)における生物多様性調査に取り組みました。 MKB でのトランセクト調査では、映像からサンゴの種類や長さを判別する作業が想像以上に難しく驚きました。粗い映像では識別が不確かで、同じサンプルを何度も見直す必要があり、精度を保つには時間と根気が欠かせないと感じました。陸上での調査と違い、海洋調査は波や視界、機材など環境要因に左右されるため、現場での工夫やチームワークが重要であることを学べたのは大きな収穫でした。さらに Labrador Park を訪れ、シンガポール本島で唯一残された自然岩礁海岸が保護区となった経緯や、かつて軍事拠点だった歴史を知り、都市化の進む中で自然環境を守る難しさを考えさせられました。この課題は、日本の沿岸域管理とも深く関わる重要なテーマだと感じました。 また、講義では人工構造物に生息するサンゴや移植による保全の可能性についても学びました。自然礁に比べ多様性は低いものの、そこに生きる耐性の強い種は、気候変動の時代において将来的な基盤になり得ることを知りました。この視点に触れたことで、「多い=良い、少ない=悪い」と単純に評価するのではなく、調査目シンガポール国立大学 熱帯海洋科学研究所
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