東出泰治 私たちは 9 月13日に共栄フードさんを訪問しました。共栄フードさんは国内に10個の工場を持ち、全国に均一の品質のパン粉を提供できることを強みにされている企業です。海外では、タイとベトナムに2つずつ工場を持っていて 、 私 た ち は バ ン コ ク に あ る united kyoei foods を訪れました。こちらの工場は電極式パン粉という、ブリキの板に電極を挿してパンを焼き、粉砕してパン粉を製造していました。共栄フードさん全体で電極式が生産量の9割を占めていることから主流な方法であることが分かりました。電極式のメリットはパン粉が固く、その結果油切れが良いために長時間揚げ物のサクサクの食感が保持されることです。スーパーやファストフード店で需要があり、小型店よりも大型チェーン店の方が一回の取引で大量のパン粉を出荷できるから、利点が大きいのだろうと思いました。 共栄フードさんの説明で印象的であったのは、東南アジアに工場が4つあるのはエビフライのためであるということです。東南アジアは主にマングローブ林を開拓してエビの養殖をしてきた歴史があり、今もインドネシアやベトナムではエビ養殖が盛んです。エビフライの原料であるエビが豊富に生産される場所であれば、エビの輸送費を削減し、鮮度の低下を抑えられるため、低価格で味の良いエビフライの製造が可能です。また日本と比べて人件費や材料費が安く、国際分業の良さを実感することができました。しかしその一方で、エビ養殖のためにマングローブ林を伐採し、そのエビを原料にエビフライを生産することは間接的に環境破壊に関与するため、パン粉の会社でもマングローブ林を保全することが大事であると思いました。また、パン粉とエビの深い関係から一つの食品でも様々パン粉製造の日系メーカーのタイ工場(United Kyoei Foods、略称 UKF)。工場を視察し、パン粉製造の工程を見学するのと同時に、タイ市場やアジア市場、日本との連携などグローバルビジネスの実態を学ぶ。 共栄フードさんでのプログラムが終了した後に、共栄フードの駐在員さんと一緒に撮った集合写真です。 な人、国、ものとつながっていると感じました。 最後に共栄フードさんへの訪問で強く感じたのは流通ルートの多様さです。冷凍食品のエビフライであっても、タイからパン粉をインドネシアに輸出してそこでエビフライを加工し日本に輸出するという様々な国を介したルートになっています。私の懸念点は、我々消費者がそのようなルートを知らないまま、その商品だけを見て食べているということです。私たちの中でエビフライを食べるときに、東南アジアのマングローブ林の伐採を連想できる人は何人いるでしょうか。日本は豊かである一方、日本人はなぜ豊かであるのかの所以を理解していないように思えます。日本が豊かである理由が分かれば、我々はもっと SDGs に配慮した社会をつくれる気がします。私としてはこのような日本を支える食品の製造プロセスを理解することができたのが、共栄フードさんでの最も大きな収穫だと思います。 16 共栄フード・タイ工場(UKF)
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