海外探検隊 Vol.24
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Waterways Watch Society の施設 <3 月 11 日> NUS 【本日のスケジュール】 09:30 魚、サンゴの記録 14:00 同定の準備 【その日の学びと気づき】 今日は keppelbay に出向き、魚とサンゴの記録を行った。今日はシンガポールに来てから最も体力を使った日だと感じる。記録には gopro を用いた。サンゴの記録ではサイズを測定するために巻き尺を海中に張る必要がある。その巻き尺を映しながら中のサンゴを記録しなければならない。この作業は非常に骨が折れる。というのも水中には流れがあるので、巻き尺がぶれてサンゴの撮影と両立させるのが非常に難しい。gopro をゆっくりと海中で動かし続けた。もちろん手動なので腰、太もも、膝が疲れる。ダンウェイ先生からアドバイスをいただきながら、何とか記録を終えることができた。 このフィールドワークの最中に気づいたのは、マリーナが生き物で溢れていることだ。イソギンチャクやクマノミが人工物の周辺に住み着くのは個人的に意外なことだった。 午後は NUS に戻った。NUS は今年で創立120周年らしい。シンガポールがマレーシアから独立したのは 1965 年なので、国そのものよりも長い歴史を持つ大学なのは、シンガポールという国ならではのことなのだと感じた。 昨日から感じていることだが、英語で授業を受けると日本語で授業を受けているときよりも集中44 いシンガポールでは、教育によって国に欠如している“資源”という部分を補完する」という考えであった。これは私にとって新たな視点であり、私の教育観を変えるものとなった。マイケルさんの話を聞き、自分の中での教育観がクリアになった。シンガポールでは教育を受けることが即ち国にコミットする選択をするということだと理解した。日本ほど大学の選択肢が多くないシンガポールでは自らの選択に覚悟をもった若者だけが大学に教育を受けに来ているのだ。国が用意したレールの上を進むという点では表面的に日本と同じように思えるが、彼らのレールの歩み方は大きく異なる。一人ひとりが己の信念をもってレールを進み、自らの進む道を“主体的”に切り開いているのだ。こうした姿勢があるからこそ、マイケルさんの「自分にできることだからやる」という行動原理が成立するのだと理解した。一方で、日本では、「今の大人世代が悪い」「若者世代が行動を起こさなければならない」といった非難が多く聞かれる。しかし、マイケルさんとの対話を通じ、自分のなかで日本の若者自身の意識変革こそが最も重要であると痛感した。周りがどうにかしてくれるのを待つのではなく、自分の意志で変えようとしなければならないのだ。この対話を通じて、日本が教育面で世界から大きく遅れている理由を理解するとともに、自分の進む道に一筋の光が差し込んだように感じた。 最後に私はマイケルさんにあることを尋ねた。「人は短い期間で、1か月で変わることはできるか」と。彼は、「もちろん変われる。そのためにはまずは行動を変えなければならない。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。」と答えた。この言葉がウィリアム・ジェームズの格言の一つであることは知っていたが、文面で見る言葉よりもなにか重みが感じられた。月曜日からの TMSI での研修では多くの NUS の学生と出会うこととなる。この経験を通じて、自分がマイケルさんとの生活で抱いた考えの答え合わせが、あるいは別の考え方が得られることを楽しみにしている。 <海洋環境科学科1年 杉浦拓門>

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