<3 月 6 日> Prime Aquaculture 【本日のスケジュール】(記入例) 09:00 ケタム島へ上陸 09:30 ワクチン接種 10:30 養殖場を見学 16:00 研修終了 18:00 明日の報告会に向け練習 【その日の学びと気づき】 ケタム島はシンガポールの東、ウビン島の南に位置する。島の東側には養殖場があり、西側には手付かずの原生林が広がっている。 今回ワクチンを接種したのは、ジャイアントグルーパーとタイガーグルーパーのハイブリッド魚だった。異種の掛け合わせによって生殖能力が低くなる分、成長にエネルギーを回せるため、養殖魚として人気があるそうだ。異種交配が生殖能力を低下させることは知っていたが、それを逆に利用して養殖が行われていることは知らなかった。その発想に驚くと同時に、過去に学んだ知識があったからこそ理解が深まり、より楽しく感じた。 ワクチン接種の手順は、まず魚を麻酔にかけることから始まった。使用されていたのは、人間の歯の治療でも使われる根治薬であった。養殖魚は最終的に人の口にはいるため、安全性を考慮した薬品選びは重要である。麻酔が効き始めると、魚は水面で口をパクパクさせ、完全に効くと水槽の底に横たわる。そこで素早く魚を取り上げ、ワクチンを接種した。接種後に水槽へ戻すと、5 分ほどで再び泳ぎ始めた。魚への負担が少なく、無駄を省いたシンプルな手順であることが印象的だった。 その後、宮田先生の案内で養殖場を見学した。大学での研究とは異なり、現場では効率性が重視されていることを改めて実感した。 明日はチェンフーとプライムアクアカルチャーの研修報告会がある。チェンフーはユキムネとカナコ、プライムアクアカルチャーはタクトと私が担当する。それぞれの研修をしっかり振り返り、万全の準備を整えて報告会に臨みたい。そこで、プライムアクアカルチャーでの 3 日間の研修を通して得た個人的な気づきと学びを、以下にまとめる。 1. 効率化 企業における研究では、限られた時間とリソースの中で以下に効率よく目的を達成するかが重要になる。特にワクチン開発では、1 日でも早く魚を病気から守る必要がある。そのため、何が本質的に重要かを見極め、簡略化できる部分は迅速に処理する、という姿勢が求められると考えた。 2. 柔軟な思考 宮田先生は魚の解剖をする際に体調不良の原因として考えられる理由をいくつか挙げながらも、「でも違うかもしれない」と慎重に判断していた姿が印象的だった。「見ても分かるものではないけど。見る」という言葉から、決めつけずに観察を続け、可能性を広く考える姿勢の大切さを学んだ。研究において、ある一つの仮説に固執せず、柔軟に考えることがより正確な結論につながるのではないかと考えた。 3. 感覚の重要性 研修では、視覚・触覚・温度感覚等の人間の感覚の大切さを実感した。例えば、溶液の粘度や温度、色の変化など、数値化しづらい情報を的確に捉えることが、結果に影響を与える。数値データだけに頼るのではなく、自分の感覚を信じて微調整する42
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