海外探検隊 Vol.24
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杉浦拓門 第 24 期シンガポール隊は、現地での最後の研修として、シンガポール国立大学(NUS)の熱 帯 海 洋 科 学 研 究 所 ( TMSI ) お よ び Reef Ecology Lab(REST)にて、サンゴに関わる生態系を対象とした一週間の研修に参加しました。研修では、サンゴの生態系に関するレクチャーをはじめ、フィールドワーク、研究所の見学、データ分析手法の指導、プレゼンテーションなどが行われ、これらの活動を通じて海外の最先端研究の現場に直接触れる、貴重な経験となりました。 研修の中でも特に印象的だったのが、研究所の見学です。私たちは、シンガポール・セントジョーンズ島にある NUS の National Marine Laboratory を訪れ、半日をかけてサンゴ礁の保全活動に関する研究の様子を見学しました。この研究所では、サンゴの個体数を増やすことに重点を置き、陸上でのサンゴ養殖が行われていました。サンゴの陸上養殖という、あまり馴染みのない取り組みに強く興味を惹かれましたが、それ以上に印象に残ったのは、研究現場で見られた創意工夫の数々です。というのも、シンガポールは長年にわたり深刻な土地不足に直面しており、この問題は研究活動にも影響を及ぼしています。また、研究費の制約も大きな課題となっていました。そうした中で、この研究所では「レゴブロック」を活用するという、非常にユニークかつ実用的な手法を採用していました。文面ではなかなか伝えきれない面白さがあるため、ぜひ現地で自分の目で確かめてほしいと思います。こうした状況に応じた柔軟な発想や工夫の精神は、類似の課題を抱える日本にとっても学ぶべき姿勢であり、非常に印象深いものでした。 このように、わずか一週間という短い期間でシンガポール国立大学(NUS)の熱帯海洋科学研究所(TMSI)は海洋科学に関わる幅広い研究を行っており、海洋の生物多様性をはじめ、気候変動等も取り扱っている研究拠点です。 写真は REST の Research Assistant と 共にSister’s Island で取ったもの。NUS の学生の海洋保全の講義に参加して訪れた。 はありましたが、アカデミックな知識の習得にとどまらず、TMSI や REST の方々の価値観にも触れることができ、人として大切な要素にも目を向ける機会となりました。特に私にとっては、アジア屈指の大学である NUS の学生たちに何が備わっているのか、我々との違いは何なのか、彼らを特別たらしめている要素を自らの目で確かめたいという思いがありました。今回の研修を通じて、それは「目的意識」と「コミュニケーション能力」にあると感じました。私たちがリスクに目を向けがちであるのに対し、彼らはリターンに着目する楽観的な思考を持っており、また、自身の考えを明確に伝えるための高度な自己分析力と表現力を備えていると実感しました。NUS での研修は、私たちに新しい視点で物事を見つめ直すきっかけを与えてくれたと感じています。 23 シンガポール国立大学 熱帯海洋科学研究所

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