海外探検隊 Vol.24
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藁萓幸宗 私たちは Prime Aquaculture という、シンガポールで魚の養殖、ワクチン開発を行う企業で2つのグループに分かれ、それぞれ3日間研修をさせていただきました。そこで働く日本人研究者のもとで、ワクチン開発、PCR、病理解剖の体験、養殖場の見学を行いました。 短い期間ではありましたが、海外企業の研究室という、学部生の私たちにとって時期尚早とも思える環境で研修を行えたことは非常に貴重な経験で、日本では得ることができなかった知見を得ることができました。 まず、研究室で発生するコストについてです。私が今までに体験した実験は高校や大学の教室で行われてきました。しかし、今回の実習は企業の研究室で行われたため、多くのことにコストが発生します。薬品や実験器具の一つ一つに値段がついていることは当たり前ですが、利益が重要である企業で研修したことで、その事実がより実感できました。研究者の方が自社で開発したワクチンを発売したいとおっしゃっていたことが印象に残っており、研究とビジネスの関係を感じました。 体験したことで印象に残っていることは電気泳動です。寒天培地に DNA を注入する作業にとても苦労しました。想像以上に繊細な作業で私は何度も失敗してしまいましたが、研究者の方は鮮やかな手つきで作業を進めていました。他の作業においても共通したことですが、正確性と効率性が両立されていると感じました。スピードが求められるが、精密性が重要な環境に緊張感を覚えると同時に、研究者の方の技術の高さを近くで見れたことで自分に不足しているスキルや意識に気づくことができました。 また、職場におけるコミュニケーションの重要さも感じました。養殖場を訪れたとき、そこ食用魚の養殖と販売を行うと同時に、魚病ワクチンの開発を行っている企業です。 日本人研究者の方にプレゼンをする様子。 で働く従業員の方々に日本人研究者の方はあいさつだけでなく、何気ない会話も交わしていました。研究室と養殖の現場は離れていますが、協力しあえる関係が構築されていると感じました。日本では上司と部下、年長者と若者といった縦の関係を意識することが多いですが、この研修で訪れた企業では横に繋がった連携をとっていると感じました。立場を意識せずに水平にコミュニケーションをとることも大切だと気づくことができました。 この研修を通じて学んだことは、今後キャリアを積んでいく私にとって重要なものになりました。企業に勤めるにしても、大学に残り研究職を志すとしても、一人の社会人として生きるうえで必要なことを学べました。 最後になりますが、私たちに研修の機会を与えてくださった企業の方々に深くお礼を申し上げます。 21 Prime Aquaculture

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