海外探検隊 Vol.19
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35 <8月12日> 休日に考えたこと 私はバンセンの街についてまだあまり知ることができていなかったため、観光を楽しみながらチャンタブリーとの違いを味わいました。最初はBangsean beachに向かいました。海の近くの道にはすごい数の屋台が並んでおり、非常に活気がありました。その後、少しBangsean beachを歩いて写真を撮り、次にBangsean Kaosam Mukに行きました。ここはとてもきれいな場所でした。このように観光地が多いことがチャンタブリーとの違いだと感じました。今日はタイの祝日ということもあり、どこもたくさんの人でにぎわっていました。そんな中、いろいろな場所へ連れてってくれるP’Boさん、バン運転手の方への感謝を忘れてはいけないと強く思いました。 本日は主に観光だったため、これまでのバンセンキャンパスでの活動を通して学んだ「タイの豊かな生態系を、私の専門である船が壊しかねない」ということを知ってもらうために、自分の知識と調べて得た知識を日報に記すことにします。 そもそも生態系を破壊する原因となる危機は主に4つあり、「1.開発など人間活動による危機,2. 自然に対する働きかけの縮小による危機,3. 人間により持ち込まれたものによる危機,4. 地球環境の変化による危機」があります。(脚注)この中で外航船がかかわる生態系の破壊の原因となる危機は3. 人間により持ち込まれたものによる危機です。 ここで紹介するのは、バラスト水による外来種の持ち込みです。このことは一般的にはあまり知られていないと思うので少し説明します。バラスト水とは船が、積荷を降ろしたあとに、重りとして乗せる海水のことです。バラスト水があることで積荷のない状態でも船の重量を確保でき、転覆を防ぐことができます。船は積荷をおろしたときにバラスト水を取り込み、積荷をのせるときにバラスト水を排出します。これは日本とタイの間の貿易でも起こりえます。「自動車部品をタイでのせ、日本でそれを降ろしバラスト水を取り込む。その船がタイに戻り、そこでまた部品を載せるためにバラスト水を排出する。」という一連の流れがあったとき、日本の海水がタイに持ち込まれることになります。このようにして外来種が持ち込まれるのです。ではどのような生物がバラスト水で持ち込まれてしまうのか。バラスト水を入れるバラストタンクの入り口にはフィルターのようなものがあるため、大きな生物が持ち込まれることはありません。しかしそのフィルターを卵や幼生なら通り抜けることがあります。このようにして様々な大きさ・種類の生物がバラスト水で別の場所に取り込まれてしまうのです。 一度大きく破壊されてしまった生態系を元に戻すことは、ほぼ不可能です。そのために船による外来種の持ち込みはできる限り、ゼロに近くしなければなりません。フィルターの質を上げたり、航路計画を変更することでバラスト水の積む回数を減らしたり、船にも生態系を守る工夫はできると思います。私がタイでの豊かな生態系を見た人間として意識高くこの問題に向き合っていきたいです。 海事システム3/西川 功/サブリーダー (注)石濱 史子 “日本の生物多様性を脅かす「4つの危機」 特集 生物多様性の保全から自然共生へ【環境問題基礎知識】“国立研究開発法人国立環境研究所 2016年12月28日https://www.nies.go.jp/kanko/news/35/35-5/35-5-05.html(参照 2022年10月31日)

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