海外探検隊 Vol.19
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23 <7月23日> フィールドワーク 今日は、清水と私でNEWater Visitor Centreを訪問した。ここはシンガポールの新しい持続可能な資源であるニューウォーターについて知ることができる浄水施設かつ博物館のような場所である。施設の見学を事前に予約して訪れたところ、ツアーガイドの方の案内があり、その説明を聞きながら見学することができた。 ニューウォーターがどのような水であるかと言うと、下水からつくられる水である。日常的に出てくる下水、生活排水は地下にあるDTSSという太いパイプを通って、重力のみで他のエネルギーを使うことなく、WRPという場所に集められる。ここで集められた下水から、以下の3つの工程を経てニューウォーターがつくられる。 ①フィルターを通した物質の除去 ②逆浸透 ③紫外線消毒 ①では、下水が0.04マイクロメートルの孔のフィルターを通る。そうすることで、水中の異物がほとんど除去される。 ②は3つの工程の中で最も重要な工程である。この工程では、浸透圧の原理の逆を利用し、圧力をかけることで不純物が混ざった水から水だけを得る。この逆浸透で①では除去しきれなかったウイルスや細菌、化学物質なども除去される。 ③の紫外線消毒で最終的な消毒、殺菌が行われる。パイプ内を流れる水に紫外線を照射して水を浄化する。多くの国の浄水施設では②の工程までしか行っておらず、この工程はシンガポール唯一の工程だそうだ。 「シンガポールには家や教育、雇用などの問題があるが、特に大きな問題なのが陸と水の2つである。」とガイドの方が言っていた。その中で今回、この施設を訪問することで水問題について考えることができた。日本では下水処理された後の水は海や川に流される。しかし、このニューウォーターは下水を処理した後に海などに流されることなく、そのまま生活水として使えるようにしている。これはまさに水不足が問題となっているシンガポールで、水を最大限に利用するために生まれた技術の結晶であると言える。私は、シンガポールが、水不足問題があることは知っていたが、今日、その解決策の一つを知った日となった。狭い国土を有効活用するために地下深くに下水を集めるパイプをつくっているというお話も、シンガポールがいかに水、そして陸という自国の大きな問題と向き合っているのかが伺えるものであった。そしてこの自国の問題との向き合い方がシンガポールそのものの発展を可能にしたのだと考えた。 現在、ニューウォーターは使用される水の割合の約30%を占めているが、シンガポールは将来的にニューウォーターの使用割合を50%まで引き上げようとしている。これに成功すれば、ニューウォーターはシンガポール以外の水不足に悩む国にとっても解決策になると考えられ、世界中でも問題となっている水問題に対して、答えの一つを提示する大きな存在になるのではないのかと考えた。 NEWater Visitor Centreの訪問が終わったあとはイーストコーストパークに向かった。この場所はJSTの金子さんがおすすめしてくださった場所の一つである。イーストコーストパークの沖合はインド洋と太平洋を結ぶ流通の重要な場所である。イーストコーストパークからはたくさんの船を見ることができた。天気が悪かったため長い時間はいなかったが、その短い時間の間でも、海運会社の名前が書かれた船を見ることができ、改めてシンガポールでは、流通も主要な産業の一つであることに気付かされた。 生物資源3・田川 輝/サブリーダー NEWater Visitor Centre

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