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概要

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49食品生産科学科1 年湯本景子シンガポールプログラム今日は驚くことに、小松先生が予想されたとおり、水槽の掃除をさせていただいた。水槽の掃除といっても、Apollo という企業の掃除であるわけだから、これまた大掛かりな作業である。水槽の掃除は基本は3 日に1 回行うもので、魚の種類によっては2 日に1 回行うそうだ。水や水槽をきれいにしてくれるRed Plocostmes という魚を投入していたりするが、それだけではなかなか水槽はきれいにはならない。スポンジを利用して丹念に磨いたあと、酸素ポンプのフィルターを洗う。スポンジで水槽を一つ一つ磨くのは、思いのほか丁寧な作業で、力加減が絶妙だ。比較的硬めのスポンジを用いて磨くため、アクリル製の水槽を力強く磨きすぎてはいけない。これこそが、機械に代替できない、人の手で行われる重要な作業なのだろう。午後は餌やりを任されていたが、水槽を見回っている最中、死んだ魚をいくつか発見した。これは何かの挽回のチャンスだと思い、餌やりを終えたあと、自ら死んだ魚の回収を申し出た。死んでいる魚を見つけるコツを尋ねると、死んでいる魚はいくつかのサインを出していることがわかった。まず、死んでいる魚は浮いていることが多い。浮いていると非常に見つけやすく、昨日の私でさえもすぐに見つけられた。次に、腹部を上にしている魚は死んでいることが多い。仰け反ったような状態でさも泳いでいるかのように水槽内を漂ってる。また、死んだ魚は水槽の隅に沈んでいる場合が多いこと。死んだ魚がいる水槽は、比較的水が濁っていること。難しかった作業も、コツを教えてもらうことで効率的になることは間違いない。今日は昨日の半分ほどの時間、つまり1 時間半程度で作業を終えることができた。まだまだ完璧とは言えず、1時間半でもかなりの時間を要したと言えるが、私にとっては大きな成長だった。また、他のメンバーと彼らの研修先、Qian HuとApollo の違いを比べてみた。話によると、Qian Hu は所謂「革新的」な事業に特化した企業であると言える。アロワナの尻尾を切って色合いを鮮やかにしたり、見栄えのためにプラスチックを入れてみたり。「観られる魚」として、観賞魚の改良に尽力しているそうだ。また、自らの施設を観光スポットとして開放している点も革新的だ。ドクターフィッシュなどの、子供も楽しめるアミューズメント的な要素も取り入れつつ、一般の人にも消費者として購買意欲を高めようとしている様子が十分に伝わってくる。一方で、Apollo は良い意味で「温故知新」を大切にしている企業だと感じた。水循環システムに重きを置き、寄生虫、病気の発生には敏感だ。また、あまり魚を改良することはなく、いくつか色の違う種類を交配させ、Hybrid 種をつくる程度だ。したがって、Qian Hu に比べると色の鮮やかさは劣るが、Apollo の魚たちは品質がよく長持ちすると考えられる。「温故知新」とは言えども、新しい時代に目を向けていない訳ではない。Apollo は食用魚も飼育しているため、観賞魚を購入する比較的裕福な国以外にも、食用魚を輸出することができるのである。手持ちの種類が増えれば増えるほど、ビジネスのターゲットが拡がっていくことを理解しているのだ。シンガポールに来る前までは、いくら調べても、「シンガポールが観賞魚で有名」程度の情報しか得られず、それぞれの企業の良さ、工夫、ビジネスの戦略までは到底図ることはできない。しかし、今回現地に赴いて、企業研修をさせていただくなかで、同じ国の同じ業種の会社でも、これだけ大きな違いがあるのだと感心した。みんなが一つの方向を向くのではなく、あの手この手で消費者の心を掴むよう努めていることは、シンガポール企業の利点であろう。(2019 年3 月15 日)日報抜粋版